山岳信仰 山梨県大菩薩嶺と短編集 – azami.work

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山岳信仰 山梨県大菩薩嶺と短編集 – azami.work

原風景

 

大菩薩連峰の盟主「大菩薩嶺」2057mと「小金沢山」2014m以外、他は全て1000m級の山々、低山の連なりですが、谷は深く豊富な水量で、東京都や神奈川県の水源となっています。
妙心上人が修行をし、かつては信仰の山だった「御正体山」、郡内領主小山田氏の山城があった「岩殿山」、眼下にリニアモーターカー新実験線施設が見える「高川山」、山梨県・東京都の境にありその名の通りピークが三つある「三頭山」、鎮西八郎為朝と白縫姫の伝説がある「滝子山」、頂上に神社があり社の後ろに石という字に似た巨岩のある「石割山」、山頂が広く開けて富士山を撮る写真家に人気の「鳥ノ胸山」、山頂に桜が植えられ4月下旬が見頃の「百蔵山」など26山があります。
大菩薩峠(だいぼさつとうげ)は、山梨県甲州市塩山上萩原と北都留郡小菅村の境にある標高1,897 mの峠です。大菩薩領標高2,057mの南方約2kmに位置する尾根の鞍部です。
古来、修験道の山岳修業の場だったといわれています。
山名の「大菩薩」の由来には諸説ありますが、『甲斐国志』によると後三年の役で東征した源義光が道に迷っていたところ、樵夫が現われてこの峠まで導いたところで消え去ったといわれ、そのとき義光が八幡大菩薩と唱えて神の加護に感謝したことに由来するとされています。
山頂の南方約二キロほど、小金沢山との間の鞍部を越える峠が中里介山の小説で著名な大菩薩峠です。
山の西面および東面の傾斜は急峻ですが、南面は緩やかで草原も広がっています。また山頂に近い雷かみなり岩からの眺めはすばらしく、甲府盆地や富士山・赤石かあかいし山脈・秩父ちちぶ山地などが一望できます。

【あざみ短編集より】

原風景
別に目的もなく、40年ぶりに古里に戻った私は、散歩に出かけた。夕べから続く雨で、あたりは白くけむっている。橋を渡ると、かつて天神下と呼ばれたバス停はなくなり、食堂が建っていた。
そういえば、朝から何も食べていない。隣の家も今は売りに出されていた。売家の看板はずいぶん古びていて、三年は放置されているだろと思われた。もっとも、こんな田舎では買い手もつかないだろうけど。
入り口の引き戸を開けると、カウンター席と、テーブル席がある。カウンター席の奥に席を決めた。
あれ? もしや知り合いではないだろうか?
カウンターの中の人物に懐かしさを憶えた。輪郭か表情か? 知った人のような気がした。
「おや、お見かけしないお客様ですなあ」
男が言った。
「ちょっと里帰りをしたものだから」
「ああ、そうかね、どこの家だい?」
「あそこの小川の分岐点」
「あれ? 雪ちゃん?」
そうだ。私は雪ちゃんと呼ばれていた。
「やっちゃん? 」
ようやく思い出した。店主らしき男はよく一緒に遊んだ幼馴染だ。当時は、どこに行くのでもやっちゃんについて歩いた。確か二つ年上だった。
「注文は?」
「田舎うどんと、山菜ごはん」
ちょっと濃いめの味付けに、なつかしさが胸を締め付ける。
「よくここを思い出したね。どうやって来たんだい」
あたしは、はっと顔を上げた。
休日に近くの美術館に行った。江戸時代の版画の特別展をしていた。激しい雨の中で人々が橋を行き交う構図。この橋の向こうの風景が目の奥に広がる。雨音が聞こえる。
やっちゃんは、漬物をカウンターに置いた。
「きゅうりの鉄砲漬だね」
「昔のと違うよ、生姜や、紫蘇や、7種類の野菜が詰めてある」
漬物から始まって、風景の話や、懐かしい駄菓子屋の話。どれくらいの時間が過ぎたのだろう。
「バスが来るよ、疲れたらまたおいでよ」
私はいつもバスに乗って帰る。橋を渡ると、高いビルが見えた。確か以前に来たときは、観光地で同じ版画を眺めていたときだ。橋の向こうの風景を想像したら、あの景色の中に立っていた。
 
目にした版画は、大はしあたけの夕立。日本橋の浜町から深川六間堀の方にかかっていた大橋で、幕府の御用船安宅丸の船蔵があったことから、安宅(あたけ)と呼ばれていた。
にわかに降り出した夕立の様が、見事に描かれている。雨音が聞こえる。大はしあたけの夕立が、あたしの記憶の中の風景と重なる。描かれていない風景の向こう側にいつか帰りたい場所がある。
 
あたしは、原風景への入口をとうとう見つけた。
 
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